伴侶の喪失など、深い哀しみを負うほどの大きな喪失体験をすると、それまでの精神状態ではいられなくなります。通常は哀しみという感情だけでなく、激しい後悔や怒り、罪悪感といった様々な負の感情に覆い尽くされてしまいます。
それはひいては、メンタル面ではうつ病になってしまったり、フィジカル面でも体調不良や病気になってしまったりすることも多く、私たちに様々な影響をもたらしています。
そんな中で、近年「レジリエンス」という言葉が流通し始めています。特に、ビジネス分野や子育てなどなど、様々な分野で注目されているキーワードです。もちろん、グリーフにおけるレジリエンスという点でも知っておいて損はないキーワードですので、今回はこのレジリエンスについて説明します。
レジリエンスとは
まず最初に、レジリエンスとは何かをご説明します。レジリエンスとは、「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」「柔軟性」「弾力性」など、ストレスに対しての能力のことを指します。
レジリエンス(心理学)
レジリエンスは誰もが持つ力
程度の差こそあれ、レジリエンスは誰しもが持っている心理的な強さ、弾力性、回復力のこと。しかしこれをどう生かすかは個々人の理解にかかっています。元々は物理学の用語でしたが、現在では心理学的レジリエンスの方が一般的になっているようです。
レジリエンスがあれば、喪失体験のようなクリティカルな出来事があった場合でも、徐々に自分の生活や人生を再構築できるようになります。
レジリエンスを向上させる
前述の Wikipedia にもありますが、アメリカ心理学会は「レジリエンスを築く10の方法」を紹介していますので転載します。
- 親戚や友人らと良好な関係を維持する。
- 危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐え難い問題として見ないようにする。
- 変えられない状況を受容する。
- 現実的な目標を立て、それに向かって進む。
- 不利な状況であっても、決断し行動する。
- 損失を出した闘いの後には、自己発見の機会を探す。
- 自信を深める。
- 長期的な視点を保ち、より広範な状況でストレスの多い出来事を検討する。
- 希望的な見通しを維持し、良いことを期待し、希望を視覚化する。
- 心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う。
まずは自身の心身を整えることが大切ですが、レジリエンスは「自尊心」とも密接に関係があるようです。自尊心というのは、簡単に言えば「自己肯定感」といえるでしょう。もっと簡単に言えば「どんな状況であっても自分のことが好きだし信頼している」という感覚のことです。
この自己肯定ができている人は、レジリエンス能力が高いため、襲い掛かる困難や大きな喪失などにも適応しやすくなります。
※低い自己肯定感の持ち主はどうすればいいのかという点は別の記事でご説明します。
死別の哀しみと向き合う
このように、レジリエンスをもって自分自身の喪失と向き合うことによって、認知の歪みを矯正することができます。愛する人の死、そしてそれに伴う様々な感情や価値観などに対して、正しく向き合うことは決して簡単なことではありませんが、私たちが本来持っている能力やスキルを活用することで、徐々にではありますが死別の哀しみと向き合うことはできます。
「あの人が心から愛してくれた私」だからこそ、できることがあるのではないでしょうか。