私たちは、人生において様々な人と出会い、そして別れを繰り返していきます。
その中で最も時間を長く過ごす関係性のひとりに「伴侶」の存在があります。
伴侶は法的には「配偶者」のことですが、それよりも何よりも「自らの人生を構成する上で非常に重要な人物」であり、自分のすべてを委ねることができる「心から愛する人」であると言えるでしょう。
このサイトでは、グリーフの特性上、法的な側面よりも心理的側面から物事を考えることがより重要と捉えています。
「夫と妻」というたった2人の最小単位で構成される「夫婦」という関係性が、お互いの人生にどれだけの影響を与えるのか測ることはできません。
グリーフとは大切な人を失った「哀しみ」
グリーフ(Grief)とは、直訳すれば「深い悲しみ」といった訳語が充てられます。また同時に「悲嘆」という言葉にも相当します。
ちなみに、似た意味に「bereavement(ビリーブメント)」という言葉があります。これは「死別」、特に愛する人を喪失することを指します。
いずれにしても、私たちが受ける様々なショックはこの「グリーフ」という言葉に集約されるといっても過言ではありません。
グリーフ反応とその影響
愛する人、大切な人との死別体験をすると、以下のようにいくつかの種類の反応を示すことになります。「グリーフ反応」はまた「死別反応」とも呼ばれます。この反応は私たち遺族にとって、自身の人生を根底から揺るがすほどの大きな影響を与えることになります。具体的には以下に分類されます。
種類 | 解説 | |
---|---|---|
1 | 感情的反応 | 愛する人を失ったことによる哀しみ、怒り、恐怖、不安、絶望、罪悪感、孤独感など |
2 | 認知的反応 | 無力感、集中力の低下など |
3 | 行動的反応 | 緊張感、動揺、泣くことなど |
4 | 身体的反応 | 睡眠障害、病気、免疫力の低下、食欲低下または増加など |
死別経験者であれば、この表のうち、1つ以上は経験があるでしょう。4つすべてに当てはまるという人も多いのではないでしょうか。
そして、ここで学習すべきなのは「これらは当然起きることだ」と思うことです。愛する人を失って何らかの影響を全く受けないということはあり得ません。
つまり、影響はあって当然であり、それによって人生が根底から覆されることは大いにあり得るということを理解することです。
より大切なのは、この状態を受け入れた上で、私たち自身がどう対処し、考え、どういう態度を取るのかということです。
しかしながら「喪失状態」にある私たちは、正直なところ冷静な判断をすることができません。「どう対処するのか」といったことは自分自身を客観的に見ることができる状態であるからこそ可能なのであって、ショック状態では困難だと言えます。
また、判断力そのものが低下しているため、このタイミングで何か重要な決断をすることはできるだけ避けた方がよいでしょう。
では、心身喪失状態、ショック状態にある私たちは日々を具体的にどう過ごせばいいのでしょうか?一例をお伝えします。
グリーフへの対処方法(外部機関を利用する)
グリーフへの対処方法は、学術的な側面からも多くの様々な研究がなされています。また自助グループやカウンセリング、精神療法、医療機関での受診など様々なアプローチがあります。
これらは自分に合うと思うものを選択するしかありません。ここでも自身の判断が求められますが、合わないと思ったらやめればいいのでいくらでも軌道修正はできるでしょう。
- 医療機関(病院等)
- NPO 団体
- カウンセリング
- 自助(サポート)グループ
- 種々のセラピー
グリーフへの対処方法(具体的な対策と本質的な理解)
上記の外部機関の利用というのは、自分がコントロールすることができないものです。相性が合えばいいのですが、時には「逆に傷ついてしまった」「同じ体験をしているはずなのに心無い言葉をかけられた」「薬を処方してもらうだけだった」といったケースもあります。この場合は、助けを求めたにもかかわらず、むしろ逆効果になってしまう可能性があります。
それは主催者との考え方や方向性の違いや、愛する伴侶の死因やそれまでの経緯などの相違などから共感できない、心を許すことができないこともあるからです。
そのような場合には無理せず参加を見送ったり、別の外部機関を利用するというのは決して間違ったことではありません。
また、そういったものに頼らずとも「自らによる対処方法」を実行することもできます。
一例としては以下のものが挙げられます。
- 言語化
- 感情表出(感情表現)
- 運動
- 趣味(ひとりでできるもの)
「ひとりで活動できる範囲」のものを行うことができます。ただ、この行為そのものは、いつか必要になるプロセスですので、初めから取り組むことは(うまくいかなかったとしても)大切だと言えます。
※ベストは外部機関の利用とフィードバックから、自らへの内面へ落とし込み、解釈し、さらにそれを外側に表現することですが、なかなかそれがうまく機能しないという場合も多いようです。
結局のところ、グリーフは表面的なものではなく、愛する人を失った哀しみを通じて自分自身を深く深く見つめる作業であり、それには年単位の膨大な時間を要します。
だからこそ、慌てることなくじっくり腰を据えて取り組むことが重要になります。自らの哀しみをしっかりと見つめてこそ、はじめてそこに「あるもの」を見つけることができるのです。